フラクタルとは?自己相似の身近な例と作り方

フラクタルとは

フラクタル(fractal)とは、一部分を拡大すると、全体とよく似た形が現れる図形のことです。どこまで拡大しても細かい凸凹や枝分かれが続き、「なめらかな線」や「平らな面」にはなりません。

言葉は、数学者ブノワ・マンデルブロが、ラテン語の fractus(砕けた・不規則な)をもとに作りました。1982年の著書『The Fractal Geometry of Nature(自然のフラクタル幾何学)』で、海岸線や雲、山並みのような自然の形を扱う数学として広く紹介しています。

円や三角形のような図形は、拡大していくと輪郭がほぼ直線に見えてきます。一方、フラクタルは拡大しても複雑さが変わりません。このため、長さや面積では大きさをうまく表せず、「1.585 次元」のような整数でない次元(フラクタル次元)で複雑さを表します(→ フラクタル次元の求め方)。

自己相似とは

自己相似とは、図形の一部分が全体の縮小コピーになっている性質です。代表例のシェルピンスキーのギャスケットは、全体が「半分の大きさの自分自身」3 つでできています。その 3 つもそれぞれ、さらに半分の大きさの 3 つでできていて、これが無限に続きます。

自己相似には、程度の違いがあります。

身近なフラクタルの例

自然の中には、自己相似に近い形がたくさんあります。ただし自然のものは、数学のフラクタルと違って無限には続かず、ある大きさより細かくなると構造が終わります。

このサイトのフラクタル図鑑には、シダや樹木のような自然に似た形から、ドラゴン曲線のような数学的な形まで 20 種を載せています。

フラクタルの作り方

自己相似なフラクタルは、「図形を縮小コピーして、決まった位置に並べる」操作を繰り返すと作れます。ギャスケットなら、次の操作です。

  1. 図形を半分の大きさに縮小したコピーを 3 つ作る。
  2. 1 つを左下、1 つを右下、1 つを上に置く。
  3. できた図形に、もう一度 1〜2 を行う。これを繰り返す。

面白いのは、最初の図形が何であっても、繰り返すうちに同じギャスケットに近づくことです。三角形から始めても、正方形や顔の絵から始めても、10 回ほど繰り返せば見分けがつかなくなります。シミュレーターのステップ表示で、初期図形を「スマイル顔」にして Step を進めると、実際に確かめられます。

この「縮小して並べる」ルールの組を反復関数系(IFS)と呼び、ルールを変えるとシダやドラゴン曲線など、さまざまな形を作れます(→ 反復関数系(IFS)とアフィン変換の基礎)。また、点を 1 つだけ使い、ルールをランダムに選んで動かす「カオスゲーム」という方法でも、同じ図形を描けます。

数学的な解説

ハッチソン作用素と反復関数系(IFS)

有限個の縮小写像の組 (縮小率 )を反復関数系(IFS)と呼びます。平面のコンパクト集合 に対するハッチソン作用素 を次で定義します。

コンパクト集合の空間にハウスドルフ距離 を入れると完備距離空間になり、 は縮小率 の縮小写像になります。したがってバナッハの不動点定理により、初期図形 が三角形でも正方形でも顔の絵でも、 はただ一つの図形 (アトラクター)に収束します。シミュレーターの「ステップ表示」は、この を と順に描いたものです。

参考文献

ほかの解説記事