フラクタル次元の求め方(相似次元とボックスカウント法)
次元とは何か
線は 1 次元、面は 2 次元、立体は 3 次元です。この「次元」を、図形を縮小したときに、元の図形がいくつの縮小コピーでできているかという見方で言い直してみます。
- 線分を 1/2 に縮小すると、元の線分は縮小コピー 2 個()でできています。
- 正方形を 1/2 に縮小すると、元の正方形は縮小コピー 4 個()でできています。
- 立方体を 1/2 に縮小すると、元の立方体は縮小コピー 8 個()でできています。
縮小率を ではなく にしても同じで、線分は 個、正方形は 個、立方体は 個になります。つまり「縮小率 のコピー 個でできている」とき、
の指数 が次元になっています。この考え方は、整数でない にもそのまま使えます。
相似次元の求め方
シェルピンスキーのギャスケットは、1/2 に縮小したコピー 3 個でできています。上の式に当てはめると なので、
となります。線(1 次元)より複雑で、面(2 次元)ほど詰まってはいない、という図形の性質が数字に表れています。このように自己相似性から求めた次元を相似次元と呼びます。
ほかの図形でも、同じように計算できます。
- コッホ曲線: 1/3 のコピー 4 個 →
- シェルピンスキーのカーペット: 1/3 のコピー 8 個 →
- ヴィチェック・フラクタル: 1/3 のコピー 5 個 →
縮小率がばらばらの場合(モランの式)
コピーごとに縮小率 が違う場合は、次のモランの式を満たす が相似次元です。
縮小率がすべて なら となり、上の と同じ式になります。例えば縮小率 1/2 と 1/4 のコピーが 1 個ずつなら で、 です。この式は一般には手計算で解けないので、シミュレーターでは数値計算(二分法)で解いています。
モランの式が使えるのは、全ての写像が相似変換(形を変えずに縮小・回転・反転・移動するだけ)の場合です。バーンズリーのシダのように、縦と横で縮み方が違う写像を含む図形では使えません。
ボックスカウント法
相似次元が使えない図形や、自然の形(海岸線、葉の輪郭など)の次元は、ボックスカウント法で見積もります。
- 図形を、1 辺の長さ のマス目(箱)で覆う。
- 図形が少しでもかかっている箱の数 を数える。
- マス目を細かくしながら数え直し、 と のグラフを描く。
- 点がほぼ一直線に並ぶので、その傾きを次元の推定値とする。
線なら、マス目の 1 辺を半分にすると箱の数は約 2 倍、面なら約 4 倍になります。傾きはそれぞれ 1 と 2 で、次元と一致します。ギャスケットでは約 3 倍ずつ増え、傾きは約 1.585 になります。
シミュレーターのカオスゲーム画面では、100 万点を打って 1 辺を 16〜512 分割したマス目で箱を数え、回帰直線の傾きを「ボックスカウント次元(推定値)」として表示しています。「次元の求め方(ボックスカウントのグラフ)」を開くと、実際の両対数グラフを見られます。
点の数やマス目の細かさには限りがあるため、推定値は理論値から数 % ずれることがあります。特に、面を埋め尽くす図形(ヘイウェイ・ドラゴンなど、理論上は 2 次元)では、輪郭のギザギザの影響で 1.8〜1.9 程度と小さめに出ます。
相似次元とハウスドルフ次元の関係
数学で最も基本的なフラクタル次元はハウスドルフ次元です。定義は難しいのですが、次の関係が知られています。
- 全ての写像が相似変換で、コピーどうしがほとんど重ならない(開集合条件を満たす)とき、相似次元はハウスドルフ次元と一致します。ギャスケット、カーペット、コッホ曲線などはこの場合です。
- コピーどうしが大きく重なっていると、相似次元は実際の次元より大きな値(上限)になります。重なった部分を二重に数えてしまうためです。
- 性質のよい自己相似集合では、ボックスカウント次元もハウスドルフ次元と一致します。
このサイトの図鑑では、次元を 3 つに分けて載せています。「理論値」は文献で確認できる値だけ、「相似次元」は全ての写像が相似変換の場合だけ計算した値、「ボックスカウント次元」はカオスゲームの点から推定した値です。たとえば結晶樹は相似次元が約 1.672 と計算できますが、コピーどうしが重なっているため、実際の次元はこれより小さい可能性があります。
数学的な解説
フラクタル次元(相似次元とボックスカウント次元)
全ての写像が相似変換(縮小率 )のとき、次のモランの式をただ一つ満たす を相似次元と呼びます。
例えばシェルピンスキーのギャスケット(、)では より です。相似次元がハウスドルフ次元と一致するのは、部分像どうしがほとんど重ならない開集合条件を満たす場合です。重なりがあると、相似次元は実際の次元より大きな値(上限)になります。
相似変換でない写像(シダなど)を含む場合、モランの式は使えません。そこでボックスカウント法で次元を推定します。図形を 1 辺 分割の格子で覆い、点を含む箱の数 を数えると、
となります。このサイトでは、カオスゲームで打った 100 万点について 1 辺 16〜512 分割の箱を数え、 と の回帰直線の傾きを推定値としています。点の数と格子の細かさが有限なので、理論値から数 % ずれることがあります(面を埋める図形では小さめに出る傾向があります)。
参考文献
- P. A. P. Moran, "Additive functions of intervals and Hausdorff measure", *Proceedings of the Cambridge Philosophical Society* 42 (1946), 15–23.
- J. E. Hutchinson, "Fractals and self similarity", *Indiana University Mathematics Journal* 30 (1981), 713–747.
- K. Falconer, *Fractal Geometry: Mathematical Foundations and Applications*, Wiley(初版 1990).